JR鎌倉駅を出て若宮大路へ。
鶴岡八幡宮方面へ少し歩いたところに、1931(昭和6)年創業の老舗「茅木家」はあります。
都内はもとより、関西方面からも足を運ぶ人がいるという、鎌倉で気軽にうなぎを味わうならここ、と言われるほど人気の老舗うなぎ屋です。
1960〜1970年代に活躍した流行作家・立原正秋の代表作のひとつ「残りの雪」で描かれています。
作品内で店内描写されていますが、なかなかに落ち着いた店内。
飾られているビール会社のポスターの色褪せをはじめとして、随所に長い時間の経過を感じさせます。
お品書きはとてもシンプル。うな丼、うな重がそれぞれ並と上。蒲焼定食のラインナップ。肝吸いは別で注文するというかたちになっています。
この日はうな重を注文。肝吸いはヨメさまが肝が苦手ということもあり二人で見送ることにしました。
お重の蓋を開けると、ふわっと香ばしい匂いが鼻を刺激してきます。
茅木家は国産のうなぎにこだわっていて、調理も蒸し上げしてから、90年前の創業当時から継ぎ足し続けてきたタレを使い、備長炭で焼き上げています。
そのため、外側はパリッと内側はふわっとした食感。タレは甘すぎることなく、うなぎの味が引き立つ濃さ。
お米もいいものを使っているんでしょうね。タレが染みた米粒の美味いこと美味いこと。ゆっくり味わって食べていたつもりなのに、わずか数分でお重が空っぽになってしまいました。
米粒一粒すらないお重を見るにつけ、もっと食べたかった、もっと味わいたかった、とそう思えるほどに美味しいうな重。ああ、また食べに行きたい。
うなぎは土用もあってか夏に食べるイメージですが、本来であれば旬は冬。
もっとも脂が乗って美味しい季節は、まさしく今なのです。できればこのシーズン中にまた味わいに行きたいところですが、次はいつ行けるやら。
今シーズンの再訪が叶わなくとも、土用に合わせて、夫婦でまた足を運びたいと思います。