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旧三觜八郎右衛門家住宅

神奈川県藤沢市羽鳥にある歴史的建造物。
記録によると1878(明治11)年に建造され、1926年から1945年にかけて改修が行われている。二階建、切妻造桟瓦葺。建築面積は143平米ある。
国の登録有形文化財に登録されている。

三觜家は室町時代前期まで遡る旧家である。
江戸時代には100石以上の高持(本百姓)で、代々八郎右衛門を名乗った。
周辺の集落一帯は羽鳥村と呼ばれていたが、その名主も務め、村内の農民の3/4と小作してもらう関係を結んでいたという。

明治維新後、羽鳥村は高座郡羽鳥村となり、その初代村長を11代目八郎右衛門が務めた。さらに13代目八郎右衛門は、姫路藩出身の儒学者・小笠原東陽を招聘、読書院をともに開いた。1872(明治5)年に学制が敷かれ、それに伴って読書院から耕余学舎という名の小学校に認定されている。

さらに5年後、小笠原東陽が私塾「耕余塾」を新設。これも三觜八郎右衛門が援助している。耕余塾からは多くの人材が輩出されており、のちに内閣総理大臣を務めた吉田茂、味の素創設者・鈴木三郎助などがいるという。

特に吉田茂は、旧三橋八郎右衛門家住宅に書生として滞在していたことが知られている。

現在までは三觜家ゆかりの個人が所有していたが、後継者不在などが理由で不動産業者に所有権が移動。建物の保存を望む声も多かったが、残念ながら2022年を目処に解体される見通しとなっている。

国の登録有形文化財ではあるが、指定文化財ではないため、改修改築の厳しい制限にはあたらず、開発についても法的な制限はない。
しかしながら、貴重な文化財であることに変わりはなく、藤沢の教育文化発祥の地であり、旧三觜家はそれを今に伝えるシンボルであることを考えると、なんとか保存継承が望まれる建造物である。