稜線を境として、北は富津市、南は鋸南町にまたがる標高329mの低名山が「鋸山」である。正式名称は乾坤山。乾坤とは天地を意味し、日本寺の山号でもある。日本名山図会の日本80名山、日本百低山のひとつとして選定されている。
山全体は凝灰岩からなっており、建築などの石材として適していることから、古くは房州石と呼ばれ、江戸時代から盛んに採石が行われていた歴史を持つ。その結果、山肌が露出。鋸の歯のように見えることから鋸山と呼ばれるようになった。
明治維新後も変わらず採石は続き、大正、昭和にかけて、横須賀軍港や横浜の港湾設備、東京湾要塞の資材として利用されたほか、靖国神社や早稲田大学構内にも使われている。
自然保護規制の強化によって、1985(昭和60)年を最後に採石は終了。石切場や石材搬出路は産業遺産として観光資源になり、現在は数多くの訪日観光客から絶大な人気を誇る観光地となっている。
ちなみに、山頂付近には猫が多い。