松江市大庭町の森に鎮座する「神魂神社」。本殿は現存する大社造の社殿の中で最も古いとされ、国宝に指定されている。地元では「大庭の大宮」とも呼ばれ、意宇六社の一社に数えられる古社だ。
主祭神は伊弉冊大神で、伊弉諾大神をあわせて祀る。社伝では、出雲国造の大祖・天穂日命がこの地に天降って創建したと伝えられる。大庭はかつて出雲国造が本拠を置いた土地で、8世紀のはじめに国造が杵築(現在の出雲大社周辺)へ移った後も、代替わりの儀式「火継式(神火相続式)」は今なお神魂神社で行われている。
国宝の本殿
現在の本殿は1583(天正11)年に古式に則って再建されたものだ。前身の社殿は落雷で失われたが、再建にあたって古い部材が受け継がれ、本殿中央の心御柱の古材からは1346(正平元)年の墨書銘が見つかっている。1900(明治33)年に旧国宝の指定を受け、1952(昭和27)年に国宝に指定された。
高く持ち上げられた床、太い柱、とち葺の屋根が大社造の古い形式を伝える。一見白木造りに見えるが、もとは彩色されていたとされ、内陣には極彩色の壁画が残る。境内には、天穂日命が高天原から天降る際に乗ってきたと伝わる古い鉄釜も祀られている。末社の貴布祢稲荷両神社の本殿は、国の重要文化財だ。
古代出雲の里を歩く
参道の入口には木造の二の鳥居が立ち、脇に「神魂神社」と刻まれた社号標が立つ。鳥居の先には自然石を積み上げた石段が本殿へと導く。参道沿いには桜が並び、春には参道を彩る。飾り気のない、古社らしい静けさが境内に満ちている。
神魂神社の周辺は、島根県立八雲立つ風土記の丘や岡田山古墳群など、古代出雲の史跡が集まるエリアだ。出雲国造の足跡をたどる散策とあわせて訪れたい。
